ソフトロボティクスとは,やわらかい素材を用いてロボットを作ろうとする分野である。

従来のロボティクスは,制御の難しさや制作の難しさから,ロボットのほとんどを固い素材で作成してきた。工場で働く組み立てロボットしかり,ASIMOしかり。

なぜ固い素材ばかり使ってきたのか。(いま言ったけど)

やわらかいというのは,計算がとっても難しい。計算量が莫大だったりそもそも予測不可能だったり。計算が難しいということは制御するのが難しいということ。なぜなら物理的な計算によって,動作する未来を正確に予測できないから。

その点,固い素材は力学的な動作が簡単に記述できて,未来を制御することが比較的容易くできる。だから安心して使える。実際,工場で働くロボットなんかは,ロボットの動作もカッチリ固定されているばかりか,ロボットが扱う物体なんかもほとんど固定されている(ベルトコンベアで一定の位置に流す,常に同じところに部品を置く,とか)。


でも,逆に言えば,固いロボットは不確実性に弱い。ちょっとでもロボットの予測(あらかじめ計算しておいた状態)から外れてしまうと,マトモに動いてくれなくなる。よく言われるのは,工場では人間にはまったく不可能なくらいの速度,精度で活躍してくれる一方で,乱雑にモノが散らばった人の家の中でドアを開けるといった単純な作業がロボットにとっては非常に難しかったりする。

この問題に対してソフトウェアで対処しようとしているのが,今の機械学習だったり強化学習と呼ばれる技術。この手法はとっても強力だけど,高価な計算資源が必要だし,エネルギー的にもお高い。

これをハードウェアの方でもっと柔軟に対応できないのか?????というところに,ソフトロボットの旨味の一つがある。

例えば,人型ロボットを考えて,このロボットに地面を歩かせようとする。一方は固い素材を使ってつくられたもの。もう一方はやわらかい素材を使って作られたものとしておく。

固い素材の方は,少しの衝撃,少しのつまづきで簡単に転倒してしまうため,それを防ぐために高価なセンサーと高価なコンピュータを積んで,超高速で衝撃に反応して転ばないような軌道を考え,足の動きを修正する。

一方でやわらかい素材の方は,少しくらいの衝撃なら足のうらやふくらはぎ,ふともものクッション性で吸収してくれる。もちろん,大きくつまづいたときはちゃんと計算してやらなければいけないけど,総合的な計算量は大きく減ることが期待される。要するに,やわらかい素材そのものが計算を大きく代替してくれると考えることができるのだ。このような考え方を,Morphological Computingというらしい。

このmorphological computingは,我々ヒトも日常的に行なっていると考えられている。たしかに,僕たちが普段歩くときには,足うらの感覚を常に見張ってたりはしないし,たぶんそんなことをしていたら歩くだけで脳みそがオーバーヒートしてしまうだろう。

物質としてのやわらかさに計算をやらせておいて,たくさんサボっていくという考え方は,なんかいいなと思ったのであった。これってつまりまあ,現実は遅延ゼロの物理シミュレータだからなあ,ということだ。

参考
新山龍馬『やわらかいロボット』
細田 耕『柔らかヒューマノイド』